FET電流方程式の記事では、FETの基本構造、種類、動作領域、及びMOSFETの各領域での電流方程式と計算方法をわかりやすく解説します。
FET電流方程式 | 概要と計算方法
FET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)は、電子回路の中で非常に重要な半導体デバイスです。FETは、電圧によって制御される電流を流すことで動作します。このため、アンプやスイッチとして広く利用されています。本記事では、FETの基本的な電流方程式とその計算方法について説明します。
FETの基本構造
FETは主に以下の3つの端子を持ちます:
- ソース (Source, S)
- ドレイン (Drain, D)
- ゲート (Gate, G)
FETの動作は、ゲート-ソース間の電圧 (VGS) によって制御されます。
FETの種類
主なFETの種類には、以下の2つがあります:
- JFET (接合型FET)
- MOSFET (金属-酸化膜半導体FET)
ここでは、一般的なMOSFETの電流方程式に焦点を当てて解説します。
MOSFETの動作領域
MOSFETには3つの主要な動作領域があります:
- カットオフ領域: VGS < Vth (閾値電圧)
- トライオード領域: VGS > Vth かつ VDS < VGS – Vth
- 飽和領域: VDS ≥ VGS – Vth
FET電流方程式
FETのドレイン電流 (ID) は、動作領域によって異なる方程式で表されます。ここではMOSFETの各領域での方程式を紹介します。
カットオフ領域
この領域では、MOSFETはオフ状態であり、ドレイン電流はほぼ流れません。したがって:
\[ I_D \approx 0 \]
トライオード領域
トライオード領域では、ドレイン電流は以下のように表されます:
\[ I_D = k \left[ (V_{GS} – V_{th})V_{DS} – \frac{V_{DS}^2}{2} \right] \]
ここで、k = \(\mu_n \cdot C_{ox} \cdot \frac{W}{L}\) です。
- \(\mu_n\): 電子移動度
- Cox: ゲート酸化膜容量
- W: チャネル幅
- L: チャネル長
飽和領域
飽和領域では、ドレイン電流は以下のように表されます:
\[ I_D = \frac{1}{2} k (V_{GS} – V_{th})^2 \]
この領域では、ドレイン電流がVDS に依存しなくなります。
計算例
例えば、以下の条件のMOSFETを考えましょう:
- \(\mu_n = 300 \text{ cm}^2/\text{V・s}\)
- Cox = 2 \times 10^{-8} \text{ F/cm}^2
- W = 10^{-4} \text{ cm}\
- L = 10^{-5} \text{ cm}
- Vth = 1 \text{ V}\
kを計算すると:
\[ k = \mu_n \cdot C_{ox} \cdot \frac{W}{L} = 300 \times 2 \times 10^{-8} \times \frac{10^{-4}}{10^{-5}} = 0.06 \text{ A/V}^2\]
次に、VGS = 3V、VDS = 1V の場合をトライオード領域の方程式に代入します:
\[ I_D = 0.06 \left[ (3 – 1) \cdot 1 – \frac{1^2}{2} \right] = 0.06 [2 – 0.5] = 0.06 \times 1.5 = 0.09 \text{ A}\]
もし、VDS = 2V の場合、飽和領域での電流は:
\[ I_D = \frac{1}{2} \times 0.06 \times (3 – 1)^2 = \frac{1}{2} \times 0.06 \times 4 = 0.12 \text{ A}\]
まとめ
FETの電流方程式は、デバイスの動作領域によって異なります。カットオフ領域では電流はほぼゼロ、トライオード領域ではVGSとVDS の関数、飽和領域では主にVGS の関数として表されます。これらの方程式を理解することで、電子回路の設計や解析が容易になります。FETの基礎を理解し、自分でも計算できるようになると、ますます電子工学が面白く感じられるでしょう。