高温超伝導体とは
高温超伝導体(HTS)は、従来の超伝導体と比較して比較的高温で超伝導性を示す、非常に特殊な超伝導体の一種です。最初の高温超伝導体は1986年にBednorzとMüllerによって発見されました。彼らは、ランタン、銅、酸素から成る化合物が、それまでの最高記録である23K(-250°C)のNb3Geを大幅に上回る、35K(-238°C)の臨界温度(Tc)を持つことを発見しました。それ以降、138K(-135°C)までの高い臨界温度を持つ多くの高温超伝導体が発見されています。高温超伝導体の超伝導メカニズムはまだ十分に理解されておらず、強い電子間相互作用や量子相転移を含むより複雑なメカニズムが関与していると考えられています。これは現在も活発な研究領域です。
YBCO超伝導体
YBCO超伝導体は、イットリウム、バリウム、銅、酸素(YBa2Cu3O7-x)から成る高温超伝導体の一種です。YBCOは、臨界温度(Tc)が約93K(-180°C)であり、これは液体窒素の沸点(-196°C)よりもはるかに高い、最初に発見された高温超伝導体の一つです。この超伝導体の特定の化学式はYBa2Cu3O7-xで、ここでのxは材料内の酸素不足を表す変数です。
YBCO超伝導体は、以下のような特徴を持ちます:
高い臨界温度:YBCO超伝導体は、従来の低温超伝導体よりもはるかに高い、約93K(-180°C)の臨界温度(Tc)を持ちます。これにより、多くの応用分野において魅力的な選択肢となります。
強い異方性:YBCO超伝導体の結晶構造は非常に異方性が強く、物理的及び電気的性質が測定方向によって異なります。これは材料の層状構造に起因します。
強力なフラックスピンニング能力:磁場を捕らえて保持する能力であるフラックスピンニングにおいて、YBCO超伝導体は強力な能力を持ちます。これは磁気浮上やエネルギー貯蔵など、多くの実用的応用において重要です。
脆い性質:YBCO超伝導体は一般的に脆く、複雑な形状に加工することが困難です。これは柔軟性が求められる特定の応用分野での使用を制限します。
高い臨界電流密度:YBCO超伝導体は、高い臨界電流密度を示すことがあり、これは電力伝送や磁気共鳴画像法(MRI)などの応用において有用性を持ちます。
酸素感度:YBCO超伝導体は酸素レベルに敏感であり、材料内の酸素原子の存在または不在によって超伝導特性が影響を受けることがあります。材料内の望ましい酸素含有量を維持するためには、慎重な取り扱いと処理が必要です。
これらの特性により、YBCO超伝導体は、電力生成や伝送、磁気共鳴画像法(MRI)機器、粒子加速器など、さまざまな応用分野で有用性を持っています。YBCO超伝導体は通常、「高温超伝導薄膜堆積」と呼ばれるプロセスを使用して製造され、パルスレーザー堆積や化学気相堆積などのさまざまな技術を用いて基板上にYBCOの薄層を堆積します。