群速度分散(GVD)は、光通信やレーザー技術においてパルスの時間的広がりに影響を与える重要な現象で、その計算方法も解説します。
群速度分散(GVD)の式 | 概要と計算方法
群速度分散(Group Velocity Dispersion, GVD)は、光や波動の伝搬において重要な概念の一つです。特に光ファイバー通信やレーザー技術において、波のパルスがどのように変化するかを理解するために役立ちます。この記事では、群速度分散の基本概念とその計算方法について解説します。
群速度分散の概要
群速度分散とは、異なる周波数成分が異なる速度で伝搬するために、パルスが時間とともに広がる現象です。これにより、通信信号が歪んだり、レーザーパルスが長くなったりすることがあります。群速度分散は、特に高精度が求められる光通信やレーザー技術において避けられない課題です。
群速度と分散関係
群速度 \(v_g\) は、位相速度 \(v_p\) と異なる概念で、波のエネルギーや情報が伝搬する速度を表します。位相速度は、波の位相が伝搬する速度です。この2つの速度は一般的に周波数に依存します。位相速度 \(v_p\) と振動数 \( \omega \) には以下の関係があります:
\[ k = \frac{\omega}{v_p} \]
ここで、\( k \) は波数 (波の空間周波数) です。そして、群速度は次の式で表されます:
\[
v_g = \frac{d\omega}{dk}
\]
しかし、分散が存在する場合、群速度も周波数に依存し、これは次のように変化します:
\[
v_g(\omega) = \frac{d\omega}{dk}
\]
ここで、分散係数 \(D\) を使って、群速度分散 \( \beta_2 \) を次のように定義します:
\[
\beta_2 = \frac{d^2 k}{d\omega^2}
\]
群速度分散の計算方法
群速度分散を計算するためには、まず分散関係式( \(\omega\) と \(k\) の関係)を知る必要があります。この分散関係式が与えられると、必要な導関数を計算して \(\beta_2\) を求めます。
例えば、光ファイバーにおける具体例を考えてみましょう。光ファイバーの分散関係式は通常次のように与えられます:
\[
\beta(\omega) = \beta_0 + \beta_1(\omega – \omega_0) + \frac{1}{2} \beta_2 (\omega – \omega_0)^2 + \ldots
\]
ここで、\(\beta_0\)、\(\beta_1\)、\(\beta_2\)はそれぞれ0次、1次、2次の分散パラメータであり、\(\omega_0\)は中心周波数です。一般的に、群速度分散はこの2次項 \(\beta_2\) に関連しています。
数値例
具体的な数値例として、設計された光ファイバーにおいて、特定の波長での\(\beta_2\)が\(-20 \, \text{ps}^2/\text{km}\)であるとします。このファイバーに光パルスを通すと、パルスの広がりは次のように計算できます:
\[
t_{\text{dispersion}} = \beta_2 L (\Delta\omega)^2
\]
ここで、 \(L\) はファイバーの長さ、\(\Delta\omega\) は周波数帯域幅です。仮に、ファイバーの長さが100kmで、周波数帯域幅が1THz(\(1 \times 10^{12} \, \text{Hz}\))であるとします。この場合、パルスの時間広がりは:
\[
t_{\text{dispersion}} = (-20 \times 10^{-12} \,\text{s}^2/\text{km}) \times 100 \,\text{km} \times (1 \times 10^{12} \,\text{Hz})^2
\]
\[
t_{\text{dispersion}} = -2000 \times 10^{-12} \,\text{s} = -2 \,\text{ps}
\]
したがって、光ファイバー内でのパルスの広がりは2ピコ秒となります。ただし、現実の設計では負の値が広がりの測定に影響を与えるため、絶対値を考慮する必要があります。
まとめ
群速度分散(GVD)は、光通信やレーザー技術において非常に重要な概念であり、波のパルスの伝搬に大きな影響を与えます。基本的な数式や計算方法を理解することで、より効果的なシステム設計や最適化が可能となります。群速度分散の詳細な理解は、技術の進歩と共にますます重要となるでしょう。