フリスの伝送公式は、無線通信における送信機から受信機への電力伝送を予測するための重要な公式であり、アンテナ間の相互作用を分析する際に使用されます。
フリスの伝送公式 | 概要と計算方法
フリスの伝送公式(Friis transmission equation)は、無線通信の分野で非常に重要な公式です。この公式は送信機から受信機への電力伝送を予測し、アンテナ間の相互作用を理解するために使われます。特にマイクロ波や衛星通信、無線LANなどの解析において幅広く利用されています。
フリスの伝送公式の概要
フリスの伝送公式は、以下のように表されます:
\[ P_r = P_t \cdot G_t \cdot G_r \cdot \left( \frac{\lambda}{4\pi R} \right)^2 \]
ここで、各変数の意味は次の通りです:
- \( P_r \): 受信電力 (W)
- \( P_t \): 送信電力 (W)
- \( G_t \): 送信アンテナゲイン (無次元)
- \( G_r \): 受信アンテナゲイン (無次元)
- \( \lambda \): 波長 (m)
- \( R \): 送信機と受信機間の距離 (m)
この公式は、伝送路中での損失や障害物による減衰を考慮しない、理想的な自由空間における電波伝播を前提としています。
フリスの伝送公式の計算方法
フリスの伝送公式を使って送信電力と受信電力を計算する方法を見ていきましょう。具体的なステップで説明します。
ステップ1: 変数の収集
まず、公式に必要な全ての変数を収集します。以下の例を考えてみましょう:
- 送信電力 \( P_t = 1 \text{ W} \)
- 送信アンテナゲイン \( G_t = 10 \)
- 受信アンテナゲイン \( G_r = 15 \)
- 周波数 \( f = 2.4 \text{ GHz} \) (無線LANの周波数帯)
- 送受信間の距離 \( R = 50 \text{ m} \)
ステップ2: 波長の計算
波長 \( \lambda \) は、光速 \( c \) と周波数 \( f \) を使って求められます:
\[ \lambda = \frac{c}{f} \]
光速 \( c \) は約 \( 3 \times 10^8 \text{ m/s} \) です。よって、
\[ \lambda = \frac{3 \times 10^8}{2.4 \times 10^9} = 0.125 \text{ m} \]
ステップ3: 公式への代入
必要な値がすべて集まったところで、フリスの伝送公式に代入します:
\[ P_r = 1 \text{ W} \cdot 10 \cdot 15 \cdot \left( \frac{0.125}{4\pi \cdot 50} \right)^2 \]
これを計算すると、
\[ P_r = 1 \cdot 10 \cdot 15 \cdot \left( \frac{0.125}{628.318} \right)^2 \approx 0.015 \text{ W} \]
つまり、受信電力は0.015Wとなります。これにより、アンテナ間の電力伝送量が理解できます。
まとめ
フリスの伝送公式は、無線通信において電力伝送を予測するための強力なツールです。この公式を理解し活用することで、アンテナの配置や電力管理を効果的に行うことができます。電波の特性を理解し、適切に設計された通信システムは、より効率的で信頼性の高い通信を可能にします。