本質半導体の概要、自由電子と正孔のキャリア濃度計算、生成消滅率、電導率などを詳しく説明。電子工学・材料科学の基本概念を理解。
本質半導体の公式 | 概要と計算方法
半導体は現代の技術において重要な役割を果たしています。特に、本質半導体(intrinsic semiconductor)は、その純粋な形で使われることが多く、電子工学や材料科学において基本的な概念の一つです。この記事では、本質半導体の公式について、その概要と計算方法を説明します。
本質半導体とは?
本質半導体とは、不純物が全く含まれない純粋な半導体のことを指します。このタイプの半導体では、電荷キャリア(電子と正孔)は温度に依存して生成されます。元素周期表の第4族元素であるシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)が一般的な本質半導体の例です。
本質半導体の特性
本質半導体の特性を理解するためには、自由電子と正孔の概念を知ることが重要です。
- 自由電子(Free Electron): 価電子帯から伝導帯に励起された電子。
- 正孔(Hole): 電子が抜けた後の価電子帯に残る「空き」位置。
これらのキャリアの生成と消滅は常に平衡状態にあり、電流を運ぶ能力を持っています。
本質半導体のキャリア濃度
キャリア濃度(Electron and Hole Concentration)は、本質半導体の重要な特性です。本質半導体のキャリア濃度は、以下のようにして求められます。
自由電子濃度 (\( n_i \)) と正孔濃度 (\( p_i \)) の計算
本質半導体では、自由電子濃度 (\( n_i \)) と正孔濃度 (\( p_i \)) は等しく、以下の式で表されます:
(1) 自由電子濃度と正孔濃度の定義:
n_i = p_i = \sqrt{N_c N_v} e^{\frac{-E_g}{2kT}}
ここで:
- \( N_c \): 伝導帯の状態密度
- \( N_v \): 価電子帯の状態密度
- \( E_g \): バンドギャップエネルギー
- \( k \): ボルツマン定数 (約 8.6173 × 10^{-5} eV/K)
- \( T \): 絶対温度 (ケルビン)
この式は本質半導体の濃度を温度の関数として示しています。
キャリア生成率と消滅率
本質半導体におけるキャリアの生成と消滅の平衡は、以下の式で表されます:
(2) キャリア生成率 (\( G_i \)) と消滅率 (\( R_i \)) の平衡:
G_i = n_i p_i
ここで \( G_i \) は生成率、\( R_i \) は消滅率を表します。平衡状態では生成された電子と正孔の対の数が消滅する対の数と等しくなります。
電導率と移動度
キャリアの濃度がわかると、半導体の電導率 (\( \sigma \)) を求めることができます。電導率は以下の式で計算されます:
(3) 半導体の電導率:
\sigma = q(n_i \mu_n + p_i \mu_p)
ここで:
- \( q \): 電子の電荷 (約 1.602 × 10^{-19} クーロン)
- \( \mu_n \): 電子の移動度
- \( \mu_p \): 正孔の移動度
まとめ
本質半導体の公式とその計算方法を理解することは、半導体の物理学を学ぶ上で重要です。本質半導体のキャリア濃度や電導率を求めることで、半導体材料の特性を詳細に分析することができます。これにより、電子デバイスの性能向上や新材料の開発に役立つ知見が得られます。
この基礎を元に、さらに詳細な半導体理論や応用技術について学んでみましょう。